年収の壁178万円とは?2026年の変更点と採用SNSで誤解を生まない伝え方

年収の壁178万円とは?2026年の変更点と採用SNSで誤解を生まない伝え方

SNS採用・採用広報

年収の壁178万円とは?
2026年の変更点と採用SNSで誤解を生まない伝え方

情報確認日:

「年収178万円まで働いても、扶養から外れない」わけではありません。178万円は、給与収入だけでほかに所得がない人について、本人の所得税がかからない収入水準を示す数字です。社会保険の加入や家族の扶養、住民税まで一括して判断できる上限ではありません。

パート・アルバイト採用のSNS発信では、この違いが応募前の安心感と入社後の納得感を左右します。制度の変更を伝えるだけでなく、自社ではどのような勤務時間・収入・社会保険の扱いになるのかまで、分けて説明することが大切です。

この記事では、まず178万円の意味を整理し、そのうえで採用への影響と、SNS投稿・求人情報・応募者対応に反映するポイントを解説します。

178万円の壁は何が変わる制度なのか

2026年分の所得税では、給与所得控除の最低保障額74万円と、対象となる人の基礎控除104万円を合わせると178万円になります。給与収入が178万円以下で、ほかに所得がなければ、本人の所得税はかかりません。

ここでいう年収は、手取りではなく給与の収入金額です。複数の勤務先から給与を受け取っている場合は合計して考えます。また、副業の事業所得や雑所得などがある場合は、給与収入だけを見て判定できません。

出典:国税庁「パート収入はいくらまで所得税がかからないか」

2026年分に適用。施行と年末調整は12月が節目

改正は原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。2026年11月までの源泉徴収事務には変更がなく、12月の年末調整などで対応します。「2026年分の税額」と「毎月の給与から差し引かれる税額」は、同じタイミングで変わるわけではありません。

採用担当者が「今年から178万円」とだけ発信すると、応募者が毎月の手取りまで変わると受け取る可能性があります。投稿には対象年を添え、給与計算の反映時期は別に説明すると理解しやすくなります。

出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」

混同しやすい「税」と「社会保険」の違い

「年収の壁」という呼び方には、目的も判定方法も異なる制度が含まれます。採用SNSで扱うときは、少なくとも次の違いを押さえておきたいところです。

本人の所得税

178万円は、給与収入だけでほかに所得がない人の課税最低限に関する数字です。給与以外の所得や、適用される控除によって判断が変わります。

住民税・家族側の税控除

住民税の非課税基準や、配偶者控除・配偶者特別控除などは別の制度です。本人の所得税がかからなくても、住民税が発生したり、家族が受ける控除額が変わったりする場合があります。

勤務先の社会保険への加入

週の所定労働時間、勤務先の適用状況、雇用期間の見込みなどで判定します。所得税の178万円とは連動せず、年収がそれより低くても加入対象になります。

健康保険の被扶養者認定

いわゆる130万円の壁は、健康保険の被扶養者認定に関する収入基準です。年齢などによる例外があり、178万円への引上げとは別に判断します。勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合、130万円未満でも被扶養者のままにはできません。

出典:国税庁「家族と税」、日本年金機構「被扶養者に関する手続き」

「106万円」の説明も更新が必要

厚生労働省は、短時間労働者の月額8.8万円以上という賃金要件を、2026年10月に撤廃予定と案内しています。これは社会保険料の負担がなくなるという意味ではありません。採用発信でも、年収の数字だけでなく、週20時間以上などの加入要件を説明する必要があります。

2026年9月時点の企業規模要件は、原則として厚生年金保険の被保険者数51人以上です。単純な店舗の在籍人数とは異なり、法人では同一法人の適用事業所を合算します。任意特定適用事業所なども対象となるほか、通常の労働者の所定労働時間・日数の4分の3以上で働く人には別の加入基準があります。

出典:厚生労働省「社会保険適用拡大Q&A」、日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」

130万円の扶養認定では、労働契約の内容も重要に

2026年4月以降、給与収入のみの人については、労働条件通知書などから見込まれる年間収入が原則130万円未満で、ほかの収入が見込まれず、生計維持に関する条件も満たす場合、原則として被扶養者とする取扱いが示されています。

この変更も「誰でも扶養のまま収入を増やせる」という制度ではありません。SNSの短い説明で個人の認定結果まで断言せず、労働契約と加入先の健康保険の基準を照合することが必要です。

出典:日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」

採用活動に期待できる変化と限界

所得税を理由に勤務時間を抑えていた人にとっては、働き方を見直すきっかけになり得ます。企業側も、既存スタッフの勤務希望を確認することで、繁忙時間帯の配置や募集人数を再検討できる可能性があります。

一方、社会保険の扶養を維持したい人や、育児・介護との両立を優先する人の希望が、税制改正だけで変わるとは限りません。年収上限の話題を、そのまま「応募が増える」「長時間働いてもらえる」という予測に置き換えるのは早計です。

採用SNSで伝える価値は、選べる働き方の具体性

求職者が知りたいのは、制度の名前よりも、自分の生活と両立できる仕事かどうかです。短時間勤務を希望する人には勤務曜日や時間帯、収入を増やしたい人には勤務時間の選択肢や社会保険の扱いを、実際の募集条件に沿って示すと判断材料になります。

職場紹介の短尺動画やスタッフへのインタビューも、働き方を具体的に伝える手段です。ただし、あるスタッフの契約や収入を全員に当てはまる条件として見せず、勤務形態ごとの違いを添える必要があります。

採用SNSで誤解を生まない伝え方

1.数字と対象条件を同じ場所に置く

画像の見出しや動画の冒頭で178万円を大きく出すなら、「本人の所得税」「給与収入のみの場合」といった対象条件も近くに置きます。重要な条件を小さな注記や投稿文の末尾に押し込むと、画像だけが共有された際に意味が変わってしまいます。

制度説明の表現は、次のように整理できます。いずれも求人広告全体ではなく、制度に触れる部分の表現例です。

誤解を招く表現:「178万円まで扶養内で働けます」

条件が伝わる表現:「2026年分の所得税は、給与収入のみでほかに所得がなければ年収178万円以下でかかりません。社会保険の加入・扶養は別の基準です」

2.「扶養内OK」を勤務条件に分解する

「扶養内」という言葉だけでは、税金の話か社会保険の話かが分かりません。自社が調整できるのは勤務時間や日数、契約内容であり、応募者の家族全体の税負担や被扶養者認定を保証することではありません。

  • 週の所定労働時間と勤務日数を示す。
  • シフト調整が可能な範囲を、現場の運用と合わせる。
  • 社会保険の加入条件を満たす場合の扱いを説明する。
  • 掛け持ち勤務など、自社の給与だけでは判断できない条件を確認する。

3.収入例には計算の前提を添える

月収・年収の例を載せる場合は、時給、勤務時間、勤務日数、計算期間をそろえます。賞与や手当を含むか、額面か手取りかも区別します。

特に手取りは、社会保険料や住民税などの条件で変わります。すべての応募者に当てはまる金額として表示せず、額面の収入例と社会保険の説明を分けるほうが、募集条件を正確に伝えやすくなります。

4.直接募集する投稿には、必要な情報を載せる

SNS上で直接労働者を募集する場合、厚生労働省は、募集主の名称・住所・連絡先・業務内容・就業場所・賃金の6情報を表示するよう求めています。制度解説の投稿と、応募を募る求人投稿は、掲載内容を分けて管理する必要があります。

連絡先については、SNSのメッセージ機能だけに頼らず、電話番号、メールアドレス、または自社の専用問い合わせフォームへのリンクを記載する扱いが示されています。短い投稿であっても、募集主や仕事の条件が曖昧な状態は避けるべきです。

出典:厚生労働省「労働者の募集広告の表示について」

発信と労務情報をそろえる運用

制度改正への対応では、新しい投稿を作るだけでなく、過去の投稿やプロフィール、固定表示の情報も見直します。新規投稿が正しくても、古い「扶養内」の説明が残っていると、応募者は異なる条件を見てしまいます。

  1. 人事・労務が募集条件を確定する。
    勤務時間、給与、社会保険の扱いを整理し、発信に使う共通資料を作ります。
  2. SNS担当が読者の疑問に合わせて編集する。
    一つの投稿に詰め込みすぎず、「所得税」「社会保険」「自社の働き方」を分けて伝えます。
  3. 公開前に数字・対象年・適用条件を確認する。
    投稿画像だけでなく、動画字幕、説明文、返信用の回答も確認対象にします。
  4. 施行時期と募集条件の変更時に更新する。
    制度の予定と実施済みの内容を区別し、固定投稿や求人ページまで一緒に点検します。

投稿企画、撮影、文章作成、コメント対応を一つの運用設計にまとめると、説明の食い違いを減らしやすくなります。外部のSNS運用支援を活用する場合も、制作担当と人事・労務の確認範囲が明確な体制なら、更新を継続しやすくなります。

評価するのは再生数だけではない

制度を扱う採用投稿では、注目を集めた量に加えて、条件が伝わったかを確かめることが大切です。応募時に同じ誤解が繰り返されるなら、表示回数が多くても説明の改善余地があります。

  • 応募者が希望する勤務時間と、募集条件が合っているか。
  • 扶養や社会保険について、どの質問が多いか。
  • 面接後に条件の認識違いで辞退する人がいないか。
  • SNSと求人ページで、説明内容に差がないか。

よくある疑問

年収178万円以下なら、税金も保険料もかかりませんか?

いいえ。178万円は、給与収入だけでほかに所得がない人の所得税に関する基準です。住民税や社会保険料は別に判定されるため、額面の給与がそのまま手取りになるとは限りません。

106万円の壁がなくなると、社会保険に入らなくてもよくなりますか?

いいえ。撤廃予定なのは月額8.8万円以上という賃金要件です。週の所定労働時間などの加入要件を満たす場合は、社会保険の対象になります。保険料の負担がなくなる変更ではありません。

採用SNSに「178万円まで扶養内」と書いてもよいですか?

所得税と社会保険の基準を混同させるため、適切ではありません。178万円が本人の所得税の話であることを示し、自社の勤務条件と社会保険の扱いを別に説明する必要があります。

コメント欄で個人の手取り額を回答してもよいですか?

本人の収入や加入保険、家族の状況が分からないまま、確定額として答えるのは避けるべきです。公開の場では制度の一般的な説明にとどめ、自社の募集条件に関する確認と、個人の税・扶養の判定を分けて対応します。

働き方を判断できる情報が、採用発信の信頼になる

年収の壁178万円を採用SNSで扱う際は、数字の大きさよりも、何の制度で、誰に、いつ適用されるのかを明確にすることが欠かせません。所得税と社会保険を分け、自社の勤務時間や給与条件まで具体的に伝えることで、応募者は自分に合う働き方を判断しやすくなります。

制度の解説、職場の紹介、募集条件が一貫している発信は、応募前後の認識違いを減らす土台になります。採用広報の信頼は、目を引く言葉だけでなく、日々の正確な説明と情報更新から生まれます。

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